講師紹介

和光大学名誉教授 山本 由美 先生
東京大学大学院 教育学研究科 教育行政学専攻 博士課程単位取得 満期退学。
専門は教育行政学、教育制度。
2010年度〜2024年度まで和光大学 教員、25年より現職。
2019年〜東京自治問題研究所 理事長。
つくば市などでの小中一貫校に関する大規模調査に参画。
国連子どもの権利委員会における日本政府審査で報告書起草委員等として参加。
■主な著書
『学校は子どもと地域の宝物』(自治体研究所、共編著、2025年)、『学校統廃合と公共施設の複合化・民営化』(自治体研究所、共編著、2024年)、『学校統廃合と財政』(自治体研究所、共編著、2026年)、『小中一貫教育の実証的検証』(花伝社、共編著、2021年)、『小中一貫教育を検証する』(花伝社、編著、2010年)、『ベストスクール』(花伝社、編著、2002年)など著作多数
■主な研究テーマ
英米や日本の教育改革、学校統廃合、小中一貫校。特に自治体レベルの教育改革とそれが実際に子どもたちにどんな影響を与えるのかについてを研究対象としている。
【動画で見る】講演内容
なぜ学校統廃合が進み、義務教育学校が生まれたのか【 PART1】
■2000年台から学校統廃合の数が高止まり
・年間約450校の小中高が廃校(2003-23年平均)
外国の研究者が驚くペース
・三重県はこの20年間で155校の学校が廃校(全国では中位)
■義務教育学校はどうして生まれたか?
①第2次安倍政権による”教育改革”の目玉として、「義務教育学校」を法制化(2015)
・文科省に確認したところ「小中一貫校と普通の小学校・中学校の教育的効果やデメリットについて、同一条件で比較した研究はなし(=小中一貫校が優れているのか不明確)」だった
②安倍政権による”地方創生”政策の下、新自由主義的な学校統廃合が進む(2014〜)
・総務省が「公共施設等総合管理計画」を「要請」(2014~2016年度)
・文科省が学校統廃合の「手引き」を58年ぶりに改正し、単学級以下校(1学年1クラス以下)の統廃合の適否を速やかに検討
■義務教育学校と小中一貫型小学校・中学校の違い
・校長が一人なのが「義務教育学校」、2人なのが「小中一貫型小学校・中学校」
・児童生徒数が少ないと「義務教育学校」、多いと「小中一貫校」にしている自治体もある
■義務教育学校の数
・2025年度までに261校
・北海道がダントツで多く、茨城、鹿児島がベスト3
・過疎地域が、地域に学校を残すために、小規模な義務教育学校を開設するケースが増えている
学校統廃合を進める「経済効率性」の論理【PART2】
■全国で拡大する学園構想
・中学校区などの括りで、小中一貫校や義務教育学校へまとめていく「学園」構想
①以前:東京都三鷹市、東京都品川区、茨城県つくば市
・アントレプレナーシップ(起業家精神)、市民科、つくば未来科 などカリキュラムが目玉
・品川区は2012年に7年生の自殺が複数発生しトーンダウン
②2024年頃〜:長野県(県知事が総務省出身)、大阪府高槻市(市民が止めた)、埼玉県行田市、神奈川県小田原市、桑名市など
・「公共施設等総合管理計画」等に基づく、経済効率性の追求とカリキュラムの形骸化(中身よりハコモノ)
■学校の統廃合、小中一貫校は教育理論からではない
・教育理論ではなく、「人数主義(=この人数を下回ったら統廃合)」に基づく学校統廃合
・「公共施設等総合管理計画」の制度設計をした、東洋大学PPPの根本佑二氏の影響
[PPP(Public Private Partnership)とは、行政サービスに民間が参画する仕組みの総称]
■2014年から、東洋大学PPPと関係が深い桑名市
・東洋大PPPがコンサルに入った自治体による強引な統廃合計画で、住民との間のトラブルが全国で発生、プールの廃止も特徴
・国交相のPPP研修(トップダウン編)の講師として、東洋大の根本氏と桑名の伊藤市長が登壇
[2014年 総務省が「公共施設等総合管理計画」を要請(公共施設の延床面積の削減)
同年2月 東洋大PPP成果発表会で「桑名」での調査結果を発表
2015年「桑名市公共施設等総合管理計画」策定 (公共施設の約45%が小中学校)]
参考:
・2014年2月 東洋大PPP成果発表会「桑名市におけるPPP可能性調査」P.15〜18
https://www.pppschool.jp/assets/pppc/2013%20seika%20happyoukai.pdf
・2023年10月 東洋大「第18回 国際PPPフォーラム 〜PPPにおける人材育成」P26-37
西田 喜久氏(桑名市役所 政策調整監 兼 教育委員会教育次長、多度学園のプロポーザル選定委員)が事例報告
桑名駅西地区のコラボハウス(東方)、桑名駅西口・東口エリア、神馬の湯(多度)、福祉ヴィレッジ(星川)、消防庁舎再編(大山田)、多度学園(多度)
https://www.pppschool.jp/assets/20240924/2023PPPForum.pdf
・2025年7月 国交相「次代を担う組織・人材のためのPPP/PFI研修」
トップダウン編の講師に、東洋大の根本氏と桑名の伊藤市長が登壇
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kanminrenkei/content/001893714.pdf
学校統廃合の「手引」はどう改訂されるのか【PART3】
■学校統廃合の「手引き」改訂に向けた会議のまとめ
・地域との合意形成の重要性、小規模校を存続させるケースについて言及
・基本方針は3点
①広域化:周辺の市町村を巻き込んだ圏内で検討
②総合化:教育委員会だけでなく、まち全体で地域の未来を考える
③現代化:GIGAスクール、個別最適化など、学習指導要領の改訂に合わせる
■広域化
・現時点で、全国の自治体の約16%が小学校1校と中学校1校のみ
・小中一貫校や義務教育学校に統合した自治体と、ごく小規模な自治体に二分される
・こうした自治体では、これ以上統廃合できないため、より広域での統廃合を進めようとしている
■総合化
・人口と税収の減少が見込まれるため、公共施設を減らす「公共施設等総合管理計画」を立てて統廃合を推進(自治体の公共施設の約4割が学校)
・数多くの財政誘導で統廃合を推進(今やればより多く国からお金を引っ張ってこれる仕組み)
・東洋大学PPPやデロイト・トーマツなどのコンサルが入った複数の自治体で、強引な計画により住民らが反対運動
■現代化
・文科省委託調査「学校統廃合を早く進めるほどコスト削減効果も早く表れる」
文科省が教育面だけでなく財政効率性についても言及した
■シカゴ市教育委員会「廃校理由」に科学的根拠なし
・統廃合が非常に多かったが、市長が代わり止まった
・アメリカでは、校舎面積に対する人数比で、「学校の適正規模」を出している
「学級数」にこだわっているのは日本だけ?
桑名の学校再編の背景「公共施設33%削減」【PART4】
■桑名市の公共施設等総合管理計画
・公共施設の約45%が小中学校
・2015年の6月に第一回目の計画を提出しておりとても早い、その後3回も改訂・追加している
・「公共施設等総合管理計画」が、まちづくりを引っ張っている状況
■桑名市の普通交付税の状況
・2004年に1市2町が合併し(旧・桑名市、多度町、長島町)、人口は13.7万人
・地方交付税は合併から10年までは合併前の交付税を満額支給、それ以降は減額し、15年で差分がゼロに
・同規模の人口で、3自治体が合併した茨城県古河市では、23小8中がまだすべて存続(住民が反対運動)
■桑名市の公共施設の老朽化
・50年すべての公共施設を維持すれば1054.4億円必要
■今後50年間で2,237億円不足と試算
・公共施設の維持・更新費用が、過去5年間の平均約50億円の3倍(約151億円)かかる見込み
・公共施設の延床面積の33%を削減する目標
↑過疎地でないのに高すぎる数値
↑公共施設削減を推進するコンサルが入ると、高めに設定されるケースがある
・原則として、複合施設として多機能化
■桑名市の学校施設適正管理計画
・2021年3月に、学校に管理する個別施設計画を作成
・70年代〜80年代に建てられた学校が多く、その後あまり改修されてこなかったため、老朽化している学校が多い
・長寿命化改修をしても、過去5年の平均7億円の3.3倍の費用がかかるため、学校を減らす必要がある、という主張
↑過去5年と比較すること自体が疑問(改修工事が本格化していない時期と比較しているため)
■桑名市の学校再編計画の背景
・2015年に「公共施設等総合管理計画」が出され、その翌年に「望ましい学校環境のあり方検討委員会」が設けられ、学校統廃合の道筋が作られる
↑「公共施設等総合管理計画」の影響か
・当時の教育課題:①学力・学習意欲、②小→中の滑らかな接続、③小規模校への対応(27小のうち11校が単学級、複式1校、④老朽化、⑤教員の意識改革と指導力向上
■桑名市の小中一貫教育基本方針
・「公共施設等総合管理計画」が出されたすぐ後、2018年には「全中学校区ブロックでの小中一貫教育の導入」方針
・桑名市は、9年間「めざす子ども像」を揃えることに力点を置いているが、教育学的にはあまり意味がない
■多度地区での進められ方
・多度地区は小規模校化により、市町村合併前から学校の統廃合計画があった
・合併前に小さかった自治体の側の学校が、統廃合されるケースは全国で多々ある
・2007年の検討委員会では、小山台宅地開発に伴う多度中小の児童数の大幅な増加見込みを踏まえ、第一段階で小規模校を統合、第二段階で小山台の学校建設を含む2校への再編を提示
・2011年に多度南小と多度西小が統廃合し、「多度青葉小」に(多度東小は地域の反対で離脱)
↑「公共施設等総合管理計画」や「小中一貫の方針」が出される前だったため、小中一貫校ではない統廃合
↑統廃合による子どもたちへの影響については、未検証のまま
■「公共施設等総合管理計画」でフェーズが変わる
・「公共施設等総合管理計画」が出たことで、多度地区が「小中一貫校化」のターゲットに
・多度地区が下記の条件に最も合うから、という理由
①中学校区でめざす子ども像を設定できる
↑小中一貫校にしなくてもできる(あまり意味がない)
②分散進学がない
↑分散進学をさせないメリットについて、教育学的に研究されていない(小中一貫校の推進者はとてもこだわる)
③小規模化が進む
・再編前の多度地区の状況:多度東小56名、多度中小477名(多い)、多度北小67名、多度青葉小82名(青葉に統廃合したばかりなのに)
参考:
桑名市「多度地区小中一貫校整備事業」令和3年2月
https://www.city.kuwana.lg.jp/documents/2698/20210129-133150.pdf
桑名市「学校施設適正管理計画 (個別施設計画)」令和3年3月
https://www.city.kuwana.lg.jp/documents/9998/07_s.pdf
桑名市「公共施設等総合管理計画」平成27年、令和4年、令和7年、令和8年
https://www.city.kuwana.lg.jp/documents/1633/r803kaitei.pdf
多度学園はどう決まったのか?住民参加と合意形成の実態【PART5】
■多度での学校再編の背景
・昭和の合併前の村ごとに小学校があり、その学区と地域のコミュニティがほぼ重なっていた
[多度町/多度村=多度小→多度中小、野代村=野代小→多度東小、七取村=七取小→多度北小、古浜村=古浜小→多度南小、古美村=古美小→多度西小]
・ワークショップを多用:決定権はないけれど、住民に発言だけさせる
・ワークショップでは学校の複合化に懸念、不安の声
[学校の複合化とは、行政窓口・社会教育・福祉・スポーツ等、他の公共施設の機能を併せ持った学校にすること]
■多度地区での小中一貫校の基本構想(2021年2月)
・小中一貫教育が求められる背景の記述にかなり無理がある
①教育基本法の「教育目的・目標」の誤った理解
②外国語、プログラミングなど
③発達の早期化、④いわゆる「中1ギャップ」
↑これらは科学的根拠がないため、今は使われなくなっている主張
⑤社会性育成機能
[小中一貫の方が社会性を育成できる、という比較研究データなし]
⑥教員の多忙化
↑逆に教師が多忙化する恐れ(特に大規模校)
・2014年の文科省調査に基づく「小中一貫校」のメリットの提示
↑「小中一貫校」にしたところの校長や教育委員会に聞いた当事者アンケートで、有意差など客観的検証なし
■多度地区での小中一貫校の基本計画
・「課題」の解消は、「つながり」でできるのか?「縦のつながり」「横のつながり」
[2016年「望ましい学校環境のあり方検討委員会」
当時の教育課題:①学力・学習意欲、②小→中の滑らかな接続(中1ギャップ)、③小規模校への対応、④老朽化、⑤教員の意識改革と指導力向上]
・住民自治の基礎となる小学校区の解体と中学校区の創設
■早い段階で敷地決定
・低い土地でなく防災面の安全性、多くが徒歩通学になるように
・地域の見守りが多い、多度中小とその周辺
■スケジュールありきの進められ方
・地域レベルの協議会やワークショップで、形式上は住民を参加させるが、重要事項を「決定」させるわけではない
・2017年2月、早い段階で多度地区の小中一貫校に関する「基本計画策定支援業務」の公募型プロポーザルを実施
↑専門性が高いためプロポーザル方式を採用、という理屈だが、特定業者が有利になる仕組み
・小中一貫校は同じような業者、例えば石本建築事務所が全国で採択されやすい
住民と紛糾した大阪府交野市(交野みらい学園)、新潟県三条市(嵐南小学校・第一中学校)、東京都品川区(豊葉の杜学園)、多度学園など
■多度地区 小中一貫校「地域協議会」(2020年6〜)
・連合会会長、PTA会長、就学前施設の保護者代表、小中学校の校長・教頭らと教育長、委員長(名古屋市立大の鈴木賢一氏)など
・形式上は、合意形成の手続きをとり、住民から声をあげさせるが、それを反映する訳ではない
・「教育現場の先生たちの議論が不十分」などの疑問も上がっている
■多度地区 小中一貫校整備事業「開校準備委員会」(2021年7月〜2026年3月)
・5年間で17回開催、そのうち6回の会議で校歌を扱っている
↑他に考えることがたくさんあったはず
・敷地配置図の検討は?教職員にとって負担の減る学校となるのか?
・プールの廃止、校種は義務教育学校にするか、4・3・2で良いのか などなど
■多度中小へ統合して施設分離型の小中一貫校として段階的に開校する案も
・多度学園の工事が遅れている一方で、スケジュールを優先し、令和7年4月の開校も検討される
・統合される側の子どもや保護者は吸収された思いになる
実際に青葉小ではアウェイ感を感じた子どもも
・地域の反対で、工事完了まで結局1年延期
■最終的な決定は教育委員会
・地域はきちんと意見をしているが、市がきちんと受け止めていない
・効果が検証された制度ではないのに、一貫校にするか義務教育学校にするかのでグループ討論
■議決機関ではない
・どこで民意が反映されるのか?市が最終決定していく
・多度地区からプールがなくなるためプールを要望する声、小中でグラウンドを分ける要望もあった
・儲けを優先する設計・建設にならないか、チェックが甘くならないか
■審議すべき内容を審議できたか?
・校名や校歌ばかりに時間を使いすぎ、AIに作らせてよかったのか?
・学校ごとに統合するかしないか、カリキュラム、競技活動、卒業式や運動会、通学路や歩道橋の設置問題など、もっと慎重に審議すべき内容があったのでは
・基本設計の段階で、4小1中の「文化」「伝統」、教育活動を承継していく作業=「すり合わせ」ができていない
・開校準備委員会や地域連携部会で決議をとった訳でもないのに、記録は「決定事項」となっている
・歩道橋を希望しても、市は「立体交差を考えていない」と退けている
■教育課程、教育活動などについて、合意形成が行われていない
・義務教育学校になることで、授業カリキュラムや行事はどう変わるのか、4・3・2制でどんな学校生活になるのか?
子どもたちに心配を抱かせないよう、目に見えるもので提示していく必要が本来はある
・学校のあり用そのものをもっと検討すべきだった
参考:
桑名市「かわら版(多度地区小中一貫校)」2017年11月〜
https://www.city.kuwana.lg.jp/aratanagakko/kosodatekyouiku/school/25-72723-302-793.html
桑名市「多度地区 小中一貫校整備事業 開校準備委員会」
https://www.city.kuwana.lg.jp/aratanagakko/kosodatekyouiku/school/25-86432-302-793.html
桑名市「多度地区 小中一貫校 地域協議会」
https://www.city.kuwana.lg.jp/aratanagakko/kosodatekyouiku/school/25-72583-302-793.html
多度学園を検証せず、全市再編へ。つくば市が義務教育学校を見直した理由【PART6】
■全市での学校再編は、多度学園を十分に検証してからすべき
・桑名市内36校の小中学校を7校の義務教育学校にする計画
・次の優先地区である光風地区は6小3中を統合、正和地区は4小2中を統合
↑つくば市の2中7小に匹敵する日本最大校数の統廃合
・中心部の再開発や市庁舎移転などの目論見があるのでは?
・まず多度学園の検証を5〜6年してから提案すべき
・多度学園を良くするためにも、次の再編はまだ着手しない方が良い
[次の再編に進むと、市の注目や予算が多度学園から移ってしまうため]
■埼玉県行田市の再編計画(2024年8月)
・市内の小中学校22校を3校の義務教育学校に集約する計画
・既存の中学校区をベースにというが、括りが大きすぎる
■小中一貫教育自体の問題点
・教育的効果もデメリットも同一条件では検証されておらず
・2000年に広島県呉市で小中一貫校がスタート
・「中1ギャップ」や小5から下降する自己有能感がが4・3・2制の根拠とされたが、2014年に国立教育政策研究所が「科学的根拠なし」と示し、呉市は根拠をシフト
■子どもの「自信」への影響
・小中一貫校と普通の小学校・中学校を比較した、心理学に基づく子ども向けの大規模アンケートの調査結果
・同一空間に思春期の中学生がいることによる影響
・小中一貫校の子どもの方が、4〜6年の時期に自信、友人関係、運動、自己価値のポイントが低い
■つくば市で行われた大規模な調査と検証
・「義務教育学校」を推進していた市長が選挙で敗れ、教育長もかわった
・小中一貫教育の検証委員会を立ち上げ、2年かけて5,000人規模のアンケートを実施
・大規模な義務教育学校の「6年生」にネガティブな結果(4年生も有意差がある)
子どもの精神的健康度や教師からのソーシャルサポート(先生からサポートを受けているか)、対教師関係、対友人関係など
■子どもの精神的健康度が高かった学校
・従来型(分離型)の小学校・中学校で、年に数回中学生と小学生が交流している学園の数値が最も良かった
・地域が学校を強力にサポートしているところほど、数値が高かった
■「義務教育学校」をやめたつくば市
・小中一貫教育検証報告書(2018)をもとに、「義務教育学校」の導入を見直し、今後学校を造る時は、独立した小学校・中学校にすることに方針転換
・4・3・2制を6・3制に戻し、義務教育学校計画を撤廃へ(2020)
・2022年度、茨城県の不登校率が全国でトップに、つくば市が突出
↑過大規模校が原因なのか、義務教育学校が原因なのかは不明
・1学年12学級規模の学園になると、遠足へ行くにも4学級ずつ3回に分けて、運動会も分けて実施、本を借りたくても回ってこない、トイレに列ができてトイレに行けないなど、過大規模校による課題が多い
■小中一貫校と非一貫校の違いの調査
・施設一体型の小中一貫校の方が、小学校5〜6年生段階でリーダーシップを発揮しにくい
「主体性」「仲を取り持つ」の指標が低い
・子どもの精神的健康度に関して、小規模な一貫校はそれほど問題がでない
■2022-23年の縦断調査の結果
・施設一体型の小中一貫校と普通の小学校・中学校を比較したところ、「低自律性外発的動機づけ」と「環境負荷」で有意差
・「低自律性外発的動機づけ」とは、自発的ではなく、人に言われたから勉強する。普通の小学校・中学校の子どもの方が、「(楽しいから)自発的に勉強する」傾向が高かった。
・「環境負荷」とは、ストレス。施設一体型の小中一貫校の方が、小6も中1もストレスが強い傾向にあった。
参考:
つくば市「つくば市の小中一貫教育の成果と課題 ―調査報告書―」2018年7月
https://www.city.tsukuba.lg.jp/material/files/group/155/shuchuikkan.pdf
東京新聞「不登校の小中学生33%増 茨城県内22年度 千人当たり全国最多」2023年10月
https://www.tokyo-np.co.jp/article/282290
学校再編で見落とされる子どもへの影響、学童、特別支援級【PART7】
■学童への影響
・利用児童の増加に伴う空間の課題、学童への距離の延伸、劣悪な保育条件になるケースも
・小中一貫校の場合は校庭を中学校の部活が使うため、学童の子が広い場所で遊べなくなる
・建設計画に学童関係者の声が反映されず、問題になるケースが増えている
■特別支援級への影響
・統廃合により、特別支援級の教室が片隅に追いやられる、普通級の交流がなくなる
・小学校から中学校への進学も、ただ隣の部屋へ移動するだけで、成長の節目や喜びを感じられないケースも
■茨城県が不登校率で全国トップに(2022年)
・つくば市が突出、大規模な義務教育学校に多くの課題
■学校の統廃合は子どもにリスクがある
・統合後に、子どもたちが「荒れる」ケースが多々ある
・東京都東久留米市滝山小のケース:小5〜6年は学年崩壊、低学年は行き渋りが出た
・なぜ荒れたのか?
①教育内容や方法のすり合わせが不十分(学校ごとに歴史や文化、教育方法も異なっていたのに)
慣れ親しんだ学校から大人の都合で勝手に環境が変わり、子どもが混乱、不安、おかしいと感じるようになる。
②前校の教師を配置せず
相談できる教師もいなくなり、孤立感や無力感を味わう。広い意味での心的外傷を追って”荒れ”や不登校に。
・4年生だけが全く荒れなかった。アンケートでも本音を書いていた。
(小5〜6年は「友だちが増えた」などの記述をするが、実際は荒れていた。=本音を言えなくなった)
・なぜ4年生だけ荒れなかったのか?統合前にその学年の保護者だけが反対運動をしており、子どもに寄り添っていたから。
・子どもにとって小学校は心の「原風景」安定した心の成長にとって不可欠。
統廃合はその母校を失うことを意味し、心の「原風景」が奪われるリスク。
■子ども基本法(2022年制定)
・子どもの意見を聞き、子どもの意見を反映できない場合はなぜそうできないかをフィードバックする必要がある。
・そうでないと、子どもたちは声を出しても無力だ、ということを学んでしまう。
■「学園構想」を市民運動で一旦歯止めをかけている自治体
・保護者が本気で立ち上がることが重要
・大阪府高槻市:2,000人規模の義務教育学校2校を含む、全市での義務教育学校計画
↑2026年2月に審議会が「答申」を出さず、「中間報告」に止めることに。
・長野県茅野市:全中学校区対象の再編計画
↑計画白紙ベースに、小学校区の移住促進運動も
・長野県須坂市:義務教育学校を含む、全市規模の再編計画
↑統合計画の大幅修正、小規模特認校化を認める、6年後の実施に
