2026年1月30日に、元校長先生や地区の社会福祉協議会理事の方々と一緒に記者会見を行いました。
その内容をご紹介させて頂きます。
配布資料① ファクトシート
1.学校再編計画の概要(新しい学校配置計画、義務教育学校とは、学校再編による学校規模の変化一覧[一部])
2.文科省の指針との乖離(適正規模/プロセス、大規模校で生じやすい課題)
3.先行自治体の事例(つくば市、武蔵野市、枚方市、品川区)
4.学術研究による「大規模・一貫校」のデメリット
5.不登校児童生徒数の推移
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配布資料② 論点マップ
1.学校規模の妥当性
2.義務教育学校の妥当性
3.全市一律・画一的な再編の妥当性
4.先行実施校の検証不足(多度学園)
5.教育効果の不明確さ(学力、不登校、中1ギャップ)
6.財政的合理性の検証不足
7.意思決定プロセルとチェック機能
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配布資料③ 署名用紙
「学校再編を進める前に、「多度学園」の検証を丁寧に行って下さい。」
先行実施校である多度学園の検証が終わるまで、全市一律の計画決定を急がず、市民参加のもとで、より良い選択肢を検討してほしい。そのための「時間」と「情報」、そして「対話の場」を求める署名です。
子育て世代に選ばれる桑名であるために
日本は少子化が進んでいます。それに伴い、学校の統廃合も進んでいます。ですが、私たちは、少子化だから単に「廃校」ではなく、少子化だからこそ、教育の充実と子育て支援をすべきではないかと考えています。

実際、兵庫県明石市では、「子どもファースト」の政策を行うことで、子育て世代から選ばれる街になりました。桑名市でも先日、「移住者支援によって出生数が9年ぶりに増加した」という報道がされていました。
私たちは、この結果を一時的なものではなく、継続させていくことこそが重要だと考えています。だからこそ、今回の学校再編計画によって、桑名で子育てをしようと考える人が離れてしまわないか、私たちは心配しています。
私たちは、学校再編そのものに反対する立場ではありません。少子化対策という文脈において、小中学校という公教育の場、地域コミュニティの核である学校はどうあるべきか、その点について、懸念と提案をお伝えしたいと考えています。
桑名市の計画の概要
桑名市では現在、市内の小中学校36校をすべて廃校にして、7校の義務教育学校に集約する計画が、先行実施校の検証を待たずに決定されようとしています。
少子化や施設の老朽化を背景に、全国で学校の統廃合が進められていますが、桑名市の学校再編計画の内容や進め方は、日本の教育行政が抱える構造的な課題を浮き彫りにしているように見えます。
その点について、計画の内容、進め方、根拠、そして構造的な課題の4つの視点から、具体的にお伝えさせて頂きます。
全国的にも極めて稀な再編計画の内容
学校規模
文科省は、1,000人超えのような過大規模校は、様々な弊害が出やすいため、「速やかに解消すべき」と学校統廃合の手引きの中で警告をしています。
ですが、桑名市の計画では、今からその規模の学校を7校中4校、新たに作ることになります。
光風地区では、2,200人規模(1学年7クラス)の巨大な学校になるという試算で、昭和のベビーブームの頃にはあったようですが、令和の時代には見当たりません。
(全国の公立小中学校のうち、1,000人超えの学校はわずか0.9%)
大規模で画一的な内容
多くの場合、学校の統廃合は、少子化が著しい地区において、小学校同士などを統廃合する形で行われています。こうした統廃合であれば、地域によっては現実的に必要だと、私たちも考えています。
一方、桑名市の場合は、市内の小中学校36校を、段階的にすべて廃校にして、7校の「義務教育学校」に一律で集約・変更する計画です。
(全国の公立小中学校のうち、義務教育学校はわずか0.8%)
検証なしで計画を決めてしまう、という進め方
現在、全国の他の自治体では、検証の結果、大規模校な学校や義務教育学校を見直す動きが出ています。
心理学・教育学に基づく3万人超えの学術調査の結果

学校規模が大きくなるほど、子どもが学校に行きたくないと感じる割合が増える。同様に、施設一体型の小中一貫校(義務教育学校)の子どもの方が、学校に行きたくないと感じる傾向が見られる、と報告されています。
(参照:「小中一貫教育の実証的検証」梅原利夫、都筑学、山本由美ら著)
他の先行自治体の事例
茨城県つくば市でも、大規模な義務教育学校の設立と同時期に、不登校数が大きく増加し、茨城県が不登校数で全国最多となった時期があります。
そして、検証の結果、「今後は義務教育学校を作らない」と方針転換し、一部の学校は既に小中分離型の学校へと戻した事実もあります。
同様に、東京都武蔵野市や大阪府枚方市、高槻市などでは、市民の声に基づく再検証の結果、「小中一貫校/義務教育学校」にすべきではない、と方針転換をしています。(参照:他の先行事例)
それに対して桑名市では、桑名初の「義務教育学校」で、「先行実施校」という位置付けの「多度学園」の開校を待たずに、全市一律で大規模な義務教育学校にするという再編計画を、3月中に決定しようとしています。
計画の根拠の不明確さ
桑名市が学校再編計画の根拠としているものの中には、不明確で、適切ではない点も見受けられます。その一部をご紹介します。
義務教育学校(施設一体型の小中一貫校)にする根拠

根拠として、桑名市は「学力向上」や「不登校改善」「中1ギャップの解消」を挙げています。
ですが、実際には市内の不登校数は増加傾向にありますし、学力向上についても、果たして成果と言えるのか疑問です。「中1ギャップの解消」については、国立教育政策研究所がその概念自体が根拠なしと発表しています。
また、「教員の負担が解消する」という主張も、小中両方の免許が必要という免許制度の壁や、施設や行事の調整負担が増加することなどから、現場で働いている先生たちの声と一致していません。
大規模校にする根拠
約40年後(2063年)の時点で、1学年2〜3学級を保てるようにするため、と桑名市は主張しています。
ですが、国立社会保障・人口問題研究所によると、長期間の、学区ごとの、児童生徒数の推計というものは、「最も不確実性が高い部類」の推計とされています。
財政的な根拠
桑名市の計画は、大規模な学校統廃合による財政メリットが不明確です。既存校舎の長寿命化や大規模改修、他の公共施設と学校を複合化した方が、スクラップ&ビルドで巨大な学校を新設するよりも、財政的に有利な可能性があります。
実際、建設費の高騰や、高額なバスの維持費、跡地活用のコストなどにより、財政上のメリットを出せていないケースも他の自治体で確認されています。
構造的な課題
なぜこうした計画が、十分な検証なしに決められようとしているのか?、その背景には、教育行政の制度的、構造的な課題が存在していると感じています。
公共施設費の削減要求
総務省が「公共施設等総合管理計画」の策定を自治体に求め、古い施設の削減を迫っています。自治体の公共施設の約4割は学校のため、学校が真っ先にリストラ対象となっていると、専門家が警笛を鳴らしています。
チェック機能の形骸化
議会の議決不要
まず、学校統廃合の計画策定は「教育委員会の所管事項、行政計画」扱いで、法律上、議会の議決を経ずに、教育委員会が単独で決められるようになっています。
教育長が首長任命制
加えて、教育長が「首長任命制」に変更されたため、教育委員会の独立性が形骸化しています。首長の影響力が強く、教育的観点よりも、財政効率(公共施設削減)が優先されやすい構造があると言えます。
地方分権
また、文科省は学校の統廃合をする際に「保護者や住民との十分な対話」を求める指針を出していますが、地方分権の観点から強制力がなく、自治体の判断を是正する仕組みに限界があります。

まとめ
学校統廃合は、教育だけでなく、通学の安全や防災、地域コミュニティ、人口動態などに大きく影響するテーマです。
それにも関わらず、1つの委員会の単独裁量によって決められて良いのでしょうか?計画が妥当性を欠いている場合に、誰が歯止めをかけるのでしょうか?
さらに、最も影響を受ける若い世代を中心に、いまだに多くの市民が学校再編計画の存在を知らない、内容を詳しく知らされていない、という課題もあります。
このように、学校統廃合の問題は、教育行政の構造的な課題が背景にあり、桑名市という一自治体の問題ではなく、全国で既に起きている、また今後さらに起こり得る大きな社会問題だと考えています。
署名活動開始の案内
今の制度では、教育委員会が 『計画決定』というハンコを押してしまえば、議会の承認なしにレールが敷かれ、既定路線になってしまいます。 議会で予算案が出る頃には『もう決まったこと』として、後戻りしにくい状況ができてしまいます。
だからこそ、計画が決定される前の『今』、私たちは、計画の妥当性や検証のあり方、意思決定プロセスについて再検証を求める署名活動を開始します。
この署名は、学校再編に対する反対や対立を目的としたものではありません。先行実施校である多度学園の検証が終わるまで、全市一律の計画決定を急がず、市民参加のもとで、より良い選択肢を検討してほしい。そのための「時間」と「情報」、そして「対話の場」を求める署名です。
私たちは、行政の皆さんと対立するためではなく、同じ目的──桑名の未来を良くするために、子育て世代に選ばれる街作りをするために、材料と時間を共有したいと考えています。
配布資料:ファクトシート
配布資料:論点マップ
配布資料:署名用紙(内容はこちら)
