大規模な学校統廃合・義務教育学校化で想定される影響と課題とは?

どんな計画にも、メリットと同じくらい「リスク」や「課題」があります。
このページでは、桑名市の学校再編(大規模な学校統廃合・全市一律の義務教育学校化)について、子どもの安全や学び、地域の未来を守るために、事前に知っておきたいポイントを整理しています。

先行する自治体の事例などを参考にしながら、「どんな点に気をつけて進めるべきか?」を一緒に考える材料としてご覧ください。

目次

通学の負担・安全性

子どもが交通事故や熱中症などに遭いやすくなる

  • 雨が強い日も、猛暑の日も、冬の寒い日も、片道45分以上の道を、保育園を出たばかりの小さい子どもが、毎日登下校せざるを得ない家庭も出てくると考えられる
  • 行きは集団登校でも、帰りはバラバラになるため、家が遠い小さい子は、結局親が毎日車で送迎しないといけなくなるケースも少なくないのでは?
  • 6歳の小さな子どもが、交通量の多い4車線の大きな道路を一人で渡らないといけなくなる状況が増えると想定される(多度の国道258号線や駅前の国道1号線など)

実際に、毎年全国で登下校中の子どもたちが巻き込まれる交通事故が相次いでいます。また、年々猛暑がひどくなり、熱中症警戒アラートが頻発している状況です。

スクールバスにも様々な懸念点がある

  • 乗り物酔いする子は、毎日のバスが辛すぎる/乗れないのでは?
  • バスに乗り遅れたら、親が送迎するか休むかしか選択肢がなくなるケースも少なくないと予想される
  • 下校のバスに乗り遅れないために、スクールカウンセラーへ相談する余裕がなくなると報告されている
  • 慢性的に運転手不足の業界なので、バスの運転手が見つからない可能性もあると考えられる
  • 外が暗い冬の帰宅時間は、少人数での乗車だと、保護者が心配しやすい場面も出てくるのでは?
  • スクールバスが導入されても、市の財政次第で、利用者が自腹で料金を支払わないといけなくなるケースもあり得るのでは?

大規模な義務教育学校を設置したつくば市の例

つくば市では、大規模な学校の統廃合(義務教育学校)により、大半の児童がバス通学となり、バス通学用に年間2億円の経費が発生しています。コロナやインフルエンザの流行時も財源がないという理由で増便できなかったそうです。3密(密閉空間、密集場所、密接場面)を回避できないバス通学は、子どもにとって不便で負担なだけでなく、感染症流行時や災害時などに健康や安全が損なわれる懸念もあります。

学校生活への影響

お互いにストレスが溜まりやすくなる

  • 保育園を出たばかりの子どもが、体格の大きな中学生と一緒に生活をしなくてはいけなくなり、不安や怖さを感じる場面も出てくるのでは?
  • 中学生は試験前などで勉強したいのに、小学生のにぎやかな遊び声が騒音に聞こえ、集中できないケースが増えると報告されている
  • 小学生は友だちと元気に遊びたいのに、中学生がテスト期間中だから、休み時間や放課後も静かにしていないといけず、発散できない状況が増えると報告されている

放課後の遊び場や特別教室が不足しがち

  • 学校が遠すぎて、放課後に学校の校庭で友達と遊んだり体を動かしたりすることができなくなる子どもが増えると想定される
  • 生徒数に対して校庭/体育館/図書室/音楽室などが足りず、教室で体育をやるような事態も起こり得るのでは?
  • 小学校がなくなることで、校庭や体育館などを使った地域/スポーツクラブの活動の場も、無くならざるを得ない可能性があるのでは?

■義務教育学校に勤務していた先生の声

”規模が大きくなるほど子どもは不安を感じ、居場所を求めて保健室や図書室へ行きます。でも、小さい子が優先で、中学生は後回しになってしまいます。図書室は、中学生にとっては静かに読書する場所。賑やかな小学生がいると多感な中学生はイライラしてしまいます。”

大規模校や小中一貫校の問題

安心できる場所が減り、不登校につながる恐れ

  • 子どもの数が今の数倍〜20倍以上に増え、学校に馴染めず、心を落ち着ける場所が減って、不安に感じる子どもも少なくないと想定される
  • 1学年7学級で毎年クラス替えがあるせいで、せっかく仲良しになっても、また1から友達作りをしないといけず、学校が嫌になってしまう子も出てくる可能性があるのでは?
  • いじめやトラブルに巻き込まれたり、望ましくない影響を受けたりするリスクが増えるのでは?
  • 子どもの数が多すぎて、先生の目が一人ひとりの子どもに行き届かなくなったり、個別フォローしにくくなったりすることも考えられる
  • 授業についていけなくなり、学校が楽しくない、行きたくない場所になってしまう子どもが増える可能性もあるのでは?

大規模な義務教育学校を設置したつくば市の例

つくば市では前市長/前教育長のもと4校の義務教育学校が作られましたが、その前後で不登校児が急増し、2022年に茨城県の不登校率は全国で1位になりました。全国的に不登校児は増加傾向のため、大規模な義務教育学校だけの影響ではありませんが、結果的に全国でワースト1位になった点を踏まえ、新市長/新教育長のもと、専門家による効果検証を行った結果、「今後は義務教育学校を作らない」「小中一貫教育の全校実施を改める」と方針転換をしました。

子どもの成長機会を奪う可能性

  • 小6の時に、最高学年として年下の子を引っ張る飛躍の機会を失うことが、専門家によって指摘されている
  • 「小学校卒業」や「中学校入学」という人生の節目が無くなり、中学生になることへの期待や成長の実感がなくなる子も増えると報告されている
  • 子どもの数に対して、係や当番、委員会や行事などでの役割が足りず、勉強以外の場面で、子どもたちの活躍の場が減ってしまうことも少なくないと考えられる
  • 小学生と中学生では違いが大きすぎるため、どちらに合わせて行事を行うと、どちらかに不満が残る状況も報告されている

■義務教育学校に勤務していた先生の声

“小学校の運動会と中学校の体育祭は似て非なるもの。どちらかに合わせると、どちらかの発達要求に応えられません。”

“小学校の卒業式は、自分の成長を感じ、未来に想いを馳せる特別な機会です。小中一貫では、6年生の気持ちがついてこないんです。”
“子ども達は、小6から中1への大きな飛躍の機会を逃してしまいます。小中一貫校では、中学生になることへの期待が薄れ、むしろ中だるみが起きやすいです。”

廃校が子どもの心にもたらしうる影響

廃校による傷つき

  • 統廃合は単なる施設の効率化ではなく、子どもの安心感や居場所に影響し、子どもの心を傷つける可能性があるのでは?
  • 子どもたちのやり場のない怒りや不安、寂しさが、器物破損や大人への不信感、学級崩壊などで表れることも報告されている

こうした学校統廃合のプロセスが、子どもに大きなストレスを与えたのではないか、と指摘されている事例も実際に発生しています。

・2013年大阪府大東市では、「学校の統廃合中止を」という遺書を残し、小5の児童が鉄道で自ら命を絶つという痛ましい事案が発生しました。
・東京都久留米市では、学校を分割統合したところ、高学年では学級崩壊、低学年では行き渋りが増加しました。
・高知県土佐清水市では、子どもや保護者などと十分な合意形成がなされないまま、2013年に4校の中学校を統合したところ、学校生活に大きな混乱が生じるほどの『荒れ』が起きたと報告されています。

もちろん、すべての地域で同じことが起こるわけではありませんが、計画を進める際には、子どもの気持ちへの配慮が欠かせないと考えられます。

義務教育学校での先生の負担

義務教育学校で新たに発生する先生の負担

  • 小中一貫校の場合、小学校と中学校の両方の教員免許が必要になるが、持っている人は非常に限られると言われている
  • 小学生と中学生では、接し方や教え方、専門性が大きく違うのに、双方の指導法を学ばないといけなくなり、先生の負担が増えるのでは?
  • 特別教室や行事の調整、大人数での会議に時間がとられる、という課題が先行事例で報告されている
  • 1,000人以上の子どもたちと組織を、1人の校長先生がマネジメントしないといけなくなるが、全国的に見てもこうした経験を持つ校長先生はほとんどいないのでは?

大規模校の新設や廃校による地域への影響

将来世代への財政負担

  • 多度学園だけで建設費は92億円超え。今後7校新設すると、90億円×7校で630億円以上の税金を投入することになるのでは?
  • 学校建設費の負債を補うため、市民サービスの質/量の低下や有料化、値上げの可能性も否定できないのでは?(駐輪場、図書館、公民館などなど)

地域の人口動態・暮らし・防災拠点への影響

  • 学校が遠くなることで、地域から子育て世代が流出し、過疎化が進行した事例も報告されている
  • 学校がなくなり、近くに避難場所や集まる場所がなくなるケースも少なくないと考えられる
  • 地域の最小単位が大きくなり過ぎ、住民同士が疎遠になった事例も報告されている
  • 学校が近く子育てしやすい環境だから住宅ローンを組んで家を買ったのに、不動産価値が下がってしまうことも起こり得るのでは?

例えば、兵庫県丹波市青垣町では、5つの小学校を1つに統合しました。その後、丹波市内の中で青垣町で著しい人口減少が発生し、町の衰退・過疎化が急速に進んでしまいました。人口減少や社会状況など、他の要因も絡んでいると考えられますが、学校再編の進め方や規模が影響している点も否定できません。

その他、大規模な義務教育学校を設置した東京都品川区や茨城県つくば市などでは、地域と学校の関係が希薄化したことが課題の1つとして挙げられています。

まとめ

ここまで見てきたように、大規模な学校再編や全市一律の義務教育学校化には、子ども・先生・地域それぞれにさまざまな課題やリスクが考えられます。

一方で、「じゃあどうしたら良いのか?」という視点もとても大切です。
ほかの自治体では、小学校同士の小規模な学校統廃合や学区の見直し、少子化で余っている学校施設の地域開放(公共施設を統合=複合化・多機能化)、小規模校の良さを活かした持続可能な形を模索する取組みも行われています。

桑名市でも、子どもたちの安全と学びを守りつつ、将来世代に無理のない形で学校を残していくために、他にもどんな選択肢があり得るのかをご一緒に考えていけたらと思います。

参考:
学校は子どもと地域のたからもの」山本由美、今西 清、柏原ゆう子 著
小中一貫・学校統廃合を止める 〜市民が学校を守った」山本由美 著
つくば市教育長インタビュー 方針を転換「5校目の義務教育学校はつくらない」
山形県鶴岡市議会議員 加藤鉱一氏「つくば市では義務教育学校の分離すすむ」
つくば市 「小中一貫教育の成果と課題」

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